紫陽花の挿し木|初心者が「絶対に失敗しない」ための鉄則は『鹿沼土』でした
「梅雨の時期に咲く紫陽花(アジサイ)がきれいだから、もっと増やして庭いっぱいにしたい」。そう思ってハサミを手にしたものの、「もし失敗して、親株までダメにしてしまったらどうしよう」と不安になっていませんか?
実は、多くの初心者がやりがちな「水挿し(水栽培)」には、大きな落とし穴があります。コップの水につけて根が出たとしても、その後の土への植え替えで枯れてしまうケースが後を絶たないのです。
園芸歴20年の私、高橋健一がたどり着いた、最も失敗が少ない方法は「最初から『鹿沼土(かぬまつち)』に挿すこと」です。特別な道具は必要ありません。この記事で紹介する手順通りに進めれば、来年の梅雨には、あなたが挿し木した紫陽花が庭で美しく咲き誇ることでしょう。
[著者情報]
👤 この記事を書いた人:高橋 健一(園芸研究家 / グリーンアドバイザー)
元種苗メーカー勤務の園芸コンサルタント。「園芸は科学ですが、難しく考える必要はありません」をモットーに、初心者でも「緑の指」を持てるようになる「失敗しない家庭園芸」を提唱。年間50回以上のワークショップを開催し、多くの園芸ファンを育てている。著書に『ズボラでも咲く!家庭園芸の裏ワザ』など。
なぜ「水挿し」で根が出たのに、土に植えると枯れてしまうのか?
「コップの水につけておいたら、白い根がたくさん出た! これで成功だ!」
そう喜んで鉢に植え替えた数日後、急に葉がしおれて枯れてしまった……。そんな経験はありませんか?
実は、これこそが紫陽花の挿し木における最大の落とし穴なのです。
「水根」と「土根」は、まったく別の生き物です
水の中で伸びてきた根(水根)と、土の中で育つ根(土根)は、見た目は似ていても、その構造と機能はまったく異なります。
水挿し(水栽培)で発生する水根は、水中の酸素を取り込むことに特化しており、土の中の環境に適応する能力が低いのです。これを人間に例えるなら、水泳選手をいきなり陸上のマラソン大会に出場させるようなものです。水中ではスイスイ泳げても、陸上ではうまく走れず、すぐに息切れしてしまいますよね。
これと同じことが、植物の根でも起こります。水根をいきなり土という過酷な環境に移すと、根は水分をうまく吸収できず、結果として「植え替え死」を招いてしまうのです。
だからこそ、私は声を大にして言います。「最初から土に挿す(土挿し)」ことこそが、遠回りのようでいて、実は最も確実な成功への近道なのです。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「根が出ること」をゴールにせず、「土に定着すること」をゴールにしましょう。
なぜなら、多くの人が見落としがちですが、挿し木の最終目的は「来年、庭や鉢で花を咲かせること」だからです。水挿しで発根させる楽しみもありますが、その後の管理の難易度を考えると、初心者の方ほど最初から土挿しを選ぶべきです。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
成功率90%超え!プロが「鹿沼土」を絶対におすすめする理由
「土に挿せばいいなら、庭の土や、余っている花の培養土でもいいの?」
そう思う方もいるかもしれません。しかし、答えは「NO」です。
ここでの選択が、成功率を90%にするか、それとも0%にしてしまうかの分かれ道になります。私が初心者の皆さんに「鹿沼土(かぬまつち)の小粒」を強くおすすめするのには、科学的な理由があります。
理由1:雑菌がいない「清潔なベッド」だから
挿し木にする枝の切り口は、人間で言えば「傷口」と同じです。
もし、傷口に泥を塗ったらどうなるでしょうか? 雑菌が入って化膿してしまいますよね。
庭の土や、有機質(腐葉土など)を含む一般的な培養土には、目に見えない雑菌やカビ、肥料分がたくさん含まれています。 これらが切り口から侵入すると、枝は発根する前に腐ってしまいます。
一方、鹿沼土や赤玉土といった無機質の用土は、高温で処理されていたり、地中深くから採掘されたりしているため、雑菌がほとんどいない「無菌」の状態です。傷ついた枝にとって、これ以上ない清潔なベッドとなるのです。
理由2:水やりのタイミングを「色」で教えてくれるから
初心者が植物を枯らす原因のナンバーワンは、「水のやりすぎ」か「水切れ」です。特に挿し木は水管理がシビアですが、鹿沼土ならその悩みを一発で解決してくれます。
鹿沼土は、水を含むと「濃い黄色」になり、乾くと「白っぽい色」に変わります。
この色の変化は非常にわかりやすく、誰が見ても「あ、白くなったから水をあげなきゃ」と判断できます。この「視覚的なサイン」こそが、経験の浅い初心者の方にとって最強の武器になるのです。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 鹿沼土は必ず「新しいもの」を使い、「小粒(または細粒)」を選んでください。
なぜなら、一度使った土には雑菌が混ざっている可能性があるからです。また、粒が大きすぎると枝を安定して支えられず、隙間ができすぎて乾燥の原因になります。「鹿沼土の小粒」、これが合言葉です。
【写真で解説】今日できる!失敗しない紫陽花の挿し木 5ステップ
それでは、実際にやってみましょう。難しい技術は必要ありません。この5つのステップを順番通りに進めるだけで、誰でもプロ並みの挿し木ができます。
準備するもの:
- 紫陽花の枝(花が終わったもの)
- 鹿沼土(小粒)
- 鉢(3〜4号程度の小さめのもの、または底に穴を開けた紙コップ)
- 清潔なハサミ(使う前に洗うか消毒する)
- 割り箸
ステップ1:最適な時期は「6月〜7月上旬」
紫陽花の挿し木に最も適しているのは、湿度が十分にあり、紫陽花の成長が活発な「梅雨の時期(6月〜7月上旬)」です。
この時期は空気中の湿度が高いため、葉からの水分蒸発(蒸散)が抑えられ、枝が枯れずに発根する確率がグンと上がります。花が終わって剪定をするタイミングで、その枝を使うのがベストです。
ステップ2:挿し穂(さしほ)を作る
花の下にある、今年伸びた新しい枝(緑色の枝)を使います。これを「緑枝挿し(りょくしざし)」と呼びます。
- 枝を2節(ふし)分、長さにして10〜15cm程度で切り取ります。「節」とは、葉っぱが生えている茎の膨らんだ部分のことです。ここから根が出やすくなります。
- 一番下の節についている葉は、手で丁寧に取り除きます。
- 一番上の節についている葉は、2枚だけ残して、あとは取り除きます。
ステップ3:葉を半分にカットする(蒸散を防ぐ)
ここが重要なポイントです。残した2枚の葉を、ハサミで半分くらいの大きさにカットしてください。
「えっ、かわいそう!」と思うかもしれませんが、これは枝を守るための優しさです。根のない枝にとって、大きな葉は水分をどんどん外に逃がしてしまう(蒸散する)原因になります。葉を小さくすることで、水分の蒸発を抑え、体力を温存させるのです。
ステップ4:水揚げをしてから、土に挿す
- 作った挿し穂を、1時間ほどコップの水につけて、しっかりと水を吸わせます(水揚げ)。
- 鉢に鹿沼土を入れ、たっぷりと水をかけて湿らせておきます。
- いきなり枝を土に突き刺してはいけません。 切り口が傷ついてしまいます。まず、割り箸で土に穴を開けます。
- その穴に、下の節が埋まる深さまで優しく枝を差し込み、周りの土を指で軽く押さえて固定します。
ステップ5:明るい日陰で管理する
挿し木が終わったら、直射日光の当たらない、明るい日陰(軒下など)に置きます。風通しが良すぎると乾燥してしまうので、風が直接当たらない場所が理想です。
あとは、鹿沼土の表面が白っぽくなったら、たっぷりと水をやるだけ。 これを約1ヶ月〜1ヶ月半続けると、新しい芽が動き出し、鉢の底から根が見えてきます。

よくある質問:発根促進剤やペットボトルは必要?
最後に、私がワークショップなどでよく受ける質問にお答えします。
Q. 「ルートン」などの発根促進剤は使ったほうがいいですか?
A. あれば安心ですが、鹿沼土と適期を守れば、なくても十分成功します。
発根促進剤は、切り口に粉をまぶすことで発根を助ける薬剤です。もちろん使えば成功率は上がりますが、紫陽花はもともと生命力が強い植物です。6月の適期に、清潔な鹿沼土を使っていれば、薬品を使わなくても高い確率で発根します。「わざわざ買いに行くのが面倒」なら、なしで始めても大丈夫ですよ。
Q. ペットボトルをかぶせる(密閉挿し)のは効果がありますか?
A. 湿度が保てるのでおすすめです。ただし、カビには注意してください。
鉢の上から半分に切ったペットボトルをかぶせる方法は、簡易的な温室効果があり、湿度を高く保てるので非常に有効です。ただし、密閉しすぎると中の空気が淀んでカビが生えることがあります。ペットボトルのキャップは外しておくか、数日に一度は外して空気を入れ替えてあげましょう。
Q. いつ鉢上げ(植え替え)をすればいいですか?
A. 新しい芽がしっかりと開き、鉢の底から根が見えたら(約1〜2ヶ月後)です。
挿し木をしてから1ヶ月ほど経つと、新しい葉(新芽)が開いてきます。これは根が出始めたサインですが、まだ慌ててはいけません。根が十分に育ち、鉢の底穴から白い根がチラッと見えるくらいになったら、いよいよ培養土を入れた鉢や庭に植え替える(鉢上げする)タイミングです。
まとめ:来年の梅雨、あなたの庭がもっと好きになる
紫陽花の挿し木を成功させるための鉄則、それは「水挿しではなく、最初から清潔な鹿沼土に挿すこと」。そして「水切れさせないこと」。
たったこれだけのことを守れば、紫陽花はあなたの期待に応えて、力強く根を伸ばしてくれます。
「私には園芸の才能がないかも…」なんて思う必要はありません。正しい方法を知っているかどうかの違いだけなのですから。
さあ、まずはホームセンターで「鹿沼土の小粒」を一袋、手に入れてください。来年の梅雨、あなたが挿した小さな枝が、立派な花を咲かせる姿を見るのが今から楽しみですね。
[参考文献リスト]
- アジサイ(紫陽花)を増やしたい! 最適な時期と方法、注意点 – GardenStory
- 紫陽花(アジサイ)の挿し木|適した時期やペットボトル水栽培のコツ – となりのカインズさん
- みんなの趣味の園芸:アジサイ(紫陽花)の育て方 – NHK出版


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