オーダースーツ専門店シニアフィッター(歴12年)/日本フォーマル協会認定ライセンス保持者。
「マナーは窮屈なルールではなく、相手への思いやり」がモットー。自身の失敗経験を活かし、格式よりも「恥をかかないための現実的な正解」を提案する頼れる兄貴分として、年間500名以上のスタイリングを担当。

「来週の結婚式、せっかくだからカフスボタンでお洒落していこう」
そう思ってカフスを用意したものの、いざ手持ちのワイシャツに合わせてみて、冷や汗をかいていませんか?
「あれ? このシャツ、普通のボタンが付いてるけど、カフスなんて通せるの?」
「穴にどうやって通すのが正解? 裏表は?」
「そもそも、こんな付け方で式場に行って笑われないだろうか……」
その焦り、痛いほどよく分かります。私も新人の頃、同じように鏡の前で格闘した経験があるからです。
でも、安心してください。実は、市販されているワイシャツの9割は、そのままカフスボタンに対応しています。 特別なシャツを買い直す必要はありません。
この記事では、動画を何度も一時停止しなくても分かるよう、「コマ送り写真」のような静止画ガイドで、正しい付け方を徹底解説します。さらに、初心者が必ずぶつかる「普通のシャツに付けると、元々のボタンが手首に当たって痛い問題」の解決策も、専門店スタッフの視点でこっそりお教えします。
読み終わる頃には、あなたの袖口は美しく整い、自信を持って友人の晴れ舞台に向かえるようになっているはずです。さあ、一緒に準備を始めましょう。
まずは確認! あなたのシャツは「カフス対応」ですか?
まず最初に、あなたが今手に持っているそのシャツが、本当にカフスボタンを使えるものなのか、不安を解消しておきましょう。
結論から申し上げますと、袖口に「ボタン」と「ボタンホール(穴)」の両方が付いているシャツであれば、問題なくカフスボタンを装着できます。
専門用語では、ボタンとボタンホールの両方が付いている袖を「コンバーチブルカフス」と呼びます。コンバーチブル(Convertible)とは「変換可能」という意味で、その名の通り、普段通りボタンで留めることもできれば、カフスボタンで留めることもできる、非常に便利な両用タイプなのです。
現代の既製シャツ、特にビジネス用のワイシャツのほとんどは、このコンバーチブルカフスを採用しています。ですので、あなたのクローゼットにあるシャツも、十中八九カフスに対応しているはずです。

もし、お手持ちのシャツが「ダブルカフス(袖を折り返すタイプ)」であれば、それはカフスボタン専用のシャツですので、もちろん装着可能です。しかし、今回は多くの人が悩む「普通のシングルカフスのシャツ(コンバーチブルカフス)」への付け方をメインに解説していきます。
【写真で解説】3分で完了! 初心者でも失敗しないカフスの付け方

それでは、実際にカフスボタンを付けていきましょう。ここでは、最も一般的で扱いやすい「スウィヴル式(レバー式)」のカフスボタンを使って解説します。
カフスボタンの付け方には、大きく分けて2つのスタイルがあります。
- 拝み合わせ(Kissing Style): 袖口の裏同士を合わせる、本来の優雅なスタイル。
- ボタン留め風(Barrel Style): 普通のボタン留めと同じように重ねるスタイル。
基本的には、カフスボタンの美しさが際立つ「拝み合わせ」を目指しましょう。
手順1:カフスボタンのレバーを「I字」にする
まず、カフスボタンの留め具(スウィヴル)を倒して、棒状(I字)にします。これで穴に通せる状態になります。
手順2:袖口を「拝み合わせ」にする
ここが最大のポイントです。いつものように袖を丸めて重ねるのではなく、袖口の「裏側」と「裏側」を合わせるようにして、袖をつまみます。 両手のひらを合わせる合掌の形に似ていることから「拝み合わせ」と呼ばれています。
手順3:外側から穴に通す
拝み合わせにした状態で、4枚重なった生地の穴(ボタンホール)の外側から、カフスボタンの軸を一気に通します。
※コンバーチブルカフスの場合、片方にはボタンが付いていますが、その隣にある穴を使います。
手順4:レバーを戻して固定する
すべての穴を通し終えたら、飛び出した留め具のレバーを90度起こして「T字」に戻します。これでカフスが抜けなくなり、装着完了です。
⚠️ 重要:普通のシャツで「ボタンが痛い」時の対処法
ここで、多くの解説記事が触れていない、しかし初心者が必ず直面する「不都合な真実」についてお話しします。
コンバーチブルカフスで「拝み合わせ」をすると、元々付いているシャツのボタンが手首の内側に来てしまい、肌に当たって痛いことがあります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 痛みが気になる場合は、無理に拝み合わせをせず、「ボタン留め風(バレルスタイル)」で付けるか、カフスの位置を少しずらして調整しましょう。
なぜなら、結婚式は長時間に及びます。私が新人の頃、無理をして拝み合わせで出席した結果、手首の骨にボタンが当たり続け、式の後半はずっと痛みを我慢していた苦い経験があるからです。
コンバーチブルカフスは便利ですが、構造上、拝み合わせに完全には最適化されていません。
どうしても痛い場合は、いつものボタン留めと同じように袖を重ねて、上からカフスを通す「バレルスタイル」に切り替えても、マナー違反にはなりません。「痛くない」ことが、笑顔で祝福するための第一条件です。
結婚式で恥をかかないための「鉄板マナー」と選び方
付け方が分かったところで、次に気になるのが「このカフス、結婚式で付けても大丈夫?」というマナーの問題でしょう。
結論から言います。結婚式(特に友人ゲスト)において、最も間違いがなく、かつコストパフォーマンスが良いのは「白蝶貝(しろちょうがい)」のカフスボタンです。
なぜ「白蝶貝」が最強なのか?
結婚式の服装マナーにおいて、白蝶貝(ホワイトシェル)は、昼夜を問わず最も格式高い素材の一つとされています。
- 昼の結婚式: 太陽の下で輝く「白」が基本。白蝶貝や真珠がベスト。
- 夜の結婚式: 本来は「オニキス(黒)」が正装ですが、日本の一般的な披露宴では、夜であっても白蝶貝で全く問題ありません。むしろ、黒い石は喪服を連想させるとして避ける年配の方もいるため、白蝶貝の方が安全です。
ブランド品である必要はありません
「結婚式だから、良いブランドのものを買わなきゃ」と焦る必要はありません。カフスボタンにおいて重要なのは、ブランドロゴではなく「素材」です。
Amazonや楽天で探せば、1,500円〜3,000円程度で、本物の白蝶貝を使ったシンプルなカフスボタンが見つかります。シルバーの台座に白蝶貝があしらわれたシンプルな丸型か四角型。これさえあれば、あなたは誰よりも「分かっている男」に見えます。
逆に、派手なブランドロゴが入ったものや、ギラギラしたクリスタルガラスのものは、主役である新郎よりも目立ってしまう可能性があるため、避けるのが無難です。
| 素材・デザイン | 昼の結婚式 | 夜の結婚式 | 友人ゲストへの推奨度 |
|---|---|---|---|
| 白蝶貝 (ホワイト) | ◎ (最適) | ◎ (問題なし) | ⭐⭐⭐⭐⭐ (迷ったらこれ) |
| シルバー (金属のみ) | ◯ (無難) | ◯ (無難) | ⭐⭐⭐⭐ (シンプルで良い) |
| 真珠 (パール) | ◎ (正装) | ◯ | ⭐⭐⭐ (少し高価) |
| オニキス (黒) | △ | ◎ (正装) | ⭐⭐ (喪服を連想させるため昼は避ける) |
| 派手な色石・ロゴ | × (NG) | △ (二次会なら) | ⭐ (避けるべき) |
※表は横にスクロールできます
よくある疑問を解決(FAQ)
最後に、店頭でよくいただく細かい疑問にお答えします。これを知っておけば、当日の不安はゼロになります。
Q. カフスボタンに「上下」の向きはありますか?
A. デザインによりますが、基本は「袖を下ろした時に正しく見える向き」です。
文字や絵柄が入っている場合は、腕を自然に下ろした状態で、相手から見て正しく見える向きに付けます。無地の丸型や四角型であれば、気にする必要はありません。
Q. 留め具(スウィヴル)の向きは、縦と横どっちが正解?
A. 穴に通した後は「横(T字)」にして固定します。
穴に通す時は「縦(I字)」、通し終わったら「横(T字)」です。これが基本のロック機構です。
Q. お葬式でもカフスボタンを付けていいですか?
A. 基本的にはNGです。外していくのが無難です。
喪服(モーニングコートなど)の正装ルールでは「黒石(オニキス)」のカフスを用いますが、一般的な参列者(ブラックスーツ)の場合は、お葬式では「光り物」や「装飾品」は避けるべきとされるため、カフスボタン自体を付けないのが最も無難で丁寧なマナーです。余計な装飾は避けましょう。
まとめ:袖口の1センチが、あなたの自信を変える
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
カフスボタンは、決してハードルの高いアイテムではありません。
「コンバーチブルカフス」という便利な仕組みのおかげで、あなたはお手持ちのシャツのまま、今すぐにでもドレスアップを楽しむことができます。
もし、手首のボタンが痛ければ、無理せず「ボタン留め風」で付けても構いません。
もし、何を買うか迷ったら、1,500円の「白蝶貝」を選べば間違いありません。
大切なのは、友人を祝福したいという気持ちと、そのために身だしなみを整えようとするあなたの心意気です。
袖口からちらりと覗くその小さな輝きは、きっとあなたの背筋を伸ばし、いつもより少し自信に満ちた振る舞いをさせてくれるはずです。
さあ、シャツに袖を通してみましょう。準備は万端です。
胸を張って、友人の晴れ舞台へ行ってらっしゃいませ!

